「転職エージェントと派遣会社って、何が違うんだろう」
結論から言えば、2つのサービスは「誰があなたを雇うか」という点で根本的に異なります。
この違いを知らずに選んでしまうと、「正社員になりたかったのに、思うように進まなかった」という状況が生まれることがあります。
この記事では、人材業界で複数の紹介会社立ち上げに関わってきた経験をもとに、人材紹介と派遣の違い・費用・サポート内容・向いている人の特徴を整理しました。「派遣から正社員を目指す際の判断軸」まで、ひとつの記事で確認できます。
監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。
人材紹介と派遣、3つの根本的な違い

人材紹介と派遣の根本的な違いは、「誰があなたを雇うか」にあります。
人材紹介では紹介を受けた企業と直接雇用契約を結び、入社後はその会社の社員として働きます。
派遣では派遣会社が雇用主となり、就業先の企業からは業務上の指示を受けながら、給与・社会保険の手続きは派遣会社が担当する形です。
この雇用形態の違いが、費用・選考の有無・転職サポートの内容すべてに影響します。
「人材紹介」は、厚生労働大臣の許可を受けた事業者が行う「有料職業紹介事業」の一形態です。転職エージェント・人材紹介会社・転職支援サービスなど、呼び方はさまざまですが、企業と求職者をマッチングして直接雇用に繋げるサービスである点は共通しています。採用が成立した場合にのみ、採用企業から紹介手数料を受け取るビジネスモデルです。
雇用形態の違い
人材紹介(転職エージェント)を利用した場合、書類選考・面接を経て内定を受けた企業と直接雇用契約を結びます。
正社員・契約社員など雇用形態はさまざまですが、雇用主は就業先の企業になります。
入社後は「その会社の社員」として働くため、長期的なキャリア形成を前提にした雇用関係が生まれます。
人材派遣を利用した場合、雇用契約は派遣会社との間で結ばれます。
就業先の企業とは直接の雇用契約関係にはありません。
指示・指揮命令は就業先から受けますが、給与の支払いや各種手続きは派遣会社が担います。
サービスの主な違いを一覧で確認
3つの軸で整理すると、違いがひと目でわかります。
| 比較項目 | 人材紹介(転職エージェント) | 人材派遣 |
|---|
| 雇用主 | 就業先企業(直接雇用) | 派遣会社(間接雇用) |
| 求職者の費用 | 無料(法的規制あり) | 無料 |
| 就業期間 | 無期限(正社員の場合) | 有期・同一職場3年が上限 |
| 選考の有無 | 書類・面接選考あり | 原則なし |
| 転職サポート | あり(書類添削・面接対策等) | 基本的になし |
| 向いている目的 | 正社員・長期雇用を目指したい | 柔軟な働き方を優先したい |
費用は誰が払うのか
人材紹介・人材派遣のどちらも、求職者は無料で利用できます。
人材紹介については、職業安定法の規定により、求職者からの手数料徴収は認められていません(職業安定法)。
費用はすべて採用企業が負担する仕組みで、その相場は採用した方の理論年収の30〜35%が一般的です(*1)。
仮に年収500万円の方が転職した場合、採用企業が支払う手数料は150万〜175万円程度になります。
人材派遣の場合、派遣会社に支払われる費用は「実働時間×時間単価」で計算される形式です。
求職者がこれを直接負担することはありません。
*1: doda「人材紹介の手数料の相場とは?」
人材紹介では就業先企業と直接雇用契約を結ぶ。派遣では派遣会社が雇用主になる。この一点を押さえておけば、費用・選考・サポート内容の違いはすべて理解しやすくなる。
転職エージェントが向いている人と使い方

転職エージェントが向いているのは、「正社員として腰を据えて働きたい」という目標がある方です。
書類添削から面接対策・内定後の条件交渉・入社後のフォローまで、転職活動の全プロセスを無料でサポートしてもらえるのが最大の特徴です。
2025年度の人材関連ビジネス市場規模は前年度比3.1%増の10兆955億円の見込みと拡大が続いており(*2)、転職エージェントサービスの種類・質も多様化しています。
*2: 矢野経済研究所「2025年度 人材ビジネスの市場動向」
転職エージェントが提供するサポート内容
転職エージェントのCA(キャリアアドバイザー)が実際に行うサポートは、求人紹介だけにとどまりません。
一般的な流れとして、以下のようなサポートを無料で受けることができます。
1. ヒアリング:希望・経験・転職動機を丁寧に聞き出す
2. 求人マッチング:希望に合う求人を複数提案する
3. 書類添削:履歴書・職務経歴書を一緒にブラッシュアップする
4. 面接対策:模擬面接・想定質問の練習をする
5. 日程調整:企業との面接日程を代わりに調整する
6. 内定後フォロー:給与・条件の交渉・入社意思の確認を行う
7. 入社後フォロー:定着支援・悩み相談のアフターフォロー
応募書類の添削や面接練習まで伴走してもらえる点は、自己応募にはないメリットです。
また、一般には公開されていない「非公開求人」へのアクセスも、転職エージェントを使う理由のひとつに挙げられます。
片面型と両面型の違いが、サポートの質に影響する
転職エージェントには「片面型」と「両面型」という2つの形態があります。
片面型は、求職者対応と企業対応を別々の担当者が分業するスタイルです。
大手エージェントに多く、担当者が求職者のサポートに専念できるため、手厚い支援が受けやすいのが特徴です。
両面型では、1人のキャリアアドバイザーが求職者対応と企業開拓・条件交渉の両方を担当しています。
中小・特化型エージェントに多く見られます。
両面型の担当者は採用企業の担当者と直接やりとりしているため、求人票には載っていない現場のリアルな情報を教えてもらいやすいという強みがあります。
どちらが優れているかというより、自分が何を重視するかによって相性が変わります。
サポートの手厚さを重視するなら片面型の大手が合いやすく、企業の生の情報を重視するなら両面型の特化型エージェントが向いています。
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人材派遣が向いている人と使い方

人材派遣が向いているのは、「ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を優先したい」という方です。
書類選考なしで比較的スムーズに就業できるため、すぐに仕事を始めたい方にも向いています。
特定のスキルを活かして短期間で稼ぎたい方や、さまざまな職場を経験しながらキャリアを見定めたい方にとっても、派遣の活用は合理的な選択肢といえます。
派遣で働く主なメリット
派遣として働く場合の主なメリットをまとめると、以下のとおりです。
派遣で働く際に知っておきたいこと
ただし、あらかじめ把握しておくべき制度上の注意点が2つあります。
同一職場での就業は原則3年が上限です。
労働者派遣法の「3年ルール」と呼ばれるもので、同じ職場・同じポジションへの派遣は、原則として3年が上限とされています。
また、2026年10月には同一労働同一賃金のガイドライン改正が施行予定であり(*3)、派遣労働者の待遇に関するルールは引き続き整備が進んでいます。
派遣として長期的に働くことを検討している方は、最新の法律動向を確認しておくことをおすすめします。
さらに、派遣会社のサポートは就業調整や就労中の相談対応が中心となるケースが多く、書類添削・面接対策・条件交渉のような転職サポートは基本的に提供されていません。
「すぐ働けるスピードと柔軟さ」と「転職支援の手厚さ」はトレードオフの関係にある、という点は理解しておくとよいでしょう。
*3: 厚生労働省「同一労働同一賃金関連情報」
派遣の強みは「スピードと柔軟さ」、注意点は「3年ルール」 書類選考なしで就業できるスピードと、ライフスタイルに合わせた就業調整のしやすさが派遣の強み。ただし同一職場での就業は3年が上限のため、長期的なキャリアを考えるなら次のステップを見据えておく必要がある。
「紹介予定派遣」の実態と注意点

紹介予定派遣とは、「派遣期間終了後に直接雇用されることを前提とした派遣形態」です。
最長6ヶ月の派遣期間中に企業と派遣スタッフの双方が適性を確認し、双方の合意のもとで直接雇用に切り替わる仕組みになっています(*4)。
「働いてみてから判断できる」という聞こえのよさがある一方で、知っておくべき現実的な注意点があります。
*4: リクルートスタッフィング「紹介予定派遣・派遣・人材紹介の違い」
紹介予定派遣の仕組みと通常派遣との違い
通常の派遣と紹介予定派遣には、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | 通常派遣 | 紹介予定派遣 |
|---|
| 直接雇用の前提 | なし | あり(双方合意が条件) |
| 事前面談の可否 | 原則不可 | 可能 |
| 履歴書提出の可否 | 原則不可 | 可能 |
| 最長派遣期間 | 3年 | 6ヶ月 |
通常の派遣では、派遣先企業が個人を選考することは法律上原則禁止されています。
紹介予定派遣では事前面談や書類確認が許可されており、選考を経て就業開始となります。
「正社員を目指すなら転職エージェントが最短ルートになりやすい」と感じる理由
紹介予定派遣は、「ミスマッチを減らしながら職場に入りたい」という方には合理的な仕組みです。
ただし一点だけ正直にお伝えすると、最終的に正社員として直接雇用されるかどうかは、企業側の判断次第です。
6ヶ月間派遣として働いた後に「正社員としての採用はしない」という判断を企業がすることもあります。
実際に現場でキャリア相談を受けてきた経験からすると、「正社員になること」が明確な目標であれば、紹介予定派遣を経由するよりも、はじめから転職エージェントを使って正社員求人に応募した方が最短ルートになるケースが多いです。キャリア相談の現場に長く関わってきた中での、率直な感覚です。
転職エージェント経由では最初から「正社員採用を前提とした選考」が始まるため、6ヶ月間の派遣期間を設けることなく内定を目指せます。
紹介予定派遣が力を発揮しやすいのは、「企業と自分の相性を事前に確かめたい」「採用ハードルが高い企業に何とか入りたい」といった場面です。
「正社員になれれば会社はどこでもよい」という方より、「この企業で長く働きたい」という思いがある方に向いている選択肢といえます。
自分に合った選び方の判断フロー

人材紹介と派遣のどちらを選ぶべきかは、「長期的に正社員として働きたいか、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を優先したいか」という2軸でほぼ決まります。
どちらが絶対に優れているわけではなく、ご自身の目的・状況次第で答えが変わります。
以下の3パターンに分けて整理しますので、当てはまるものを確認してみてください。
「正社員として腰を据えて働きたい」なら
次の状況に当てはまる方は、転職エージェント(人材紹介)が向いている可能性が高いでしょう。
転職エージェントは求職者には完全無料で、登録から内定・入社後まで伴走してもらえます。
「どこから始めればいいかわからない」という方も、まず登録してカウンセリングを受けることで、自分の状況や選択肢を整理しやすくなります。
「今の生活スタイルに合わせて柔軟に働きたい」なら
次の状況に当てはまる方は、人材派遣が向いている可能性が高いでしょう。
派遣は「今すぐ正社員にならなければいけない」というプレッシャーを一旦手放しながら、自分に合った働き方を選べる点が強みです。
現在派遣で働いており「そろそろ正社員になりたい」なら
今まさに派遣社員として働いていて、正社員への転換を目指している方へ。
転職エージェントに相談する前に、以下の3点を確認しておくと方向性が整理しやすくなります。
1. 正社員として勤務した経験があるか
2. ポテンシャル採用の対象となる年齢層か(一般的に20代後半が目安として語られることが多い)
3. 人手不足とされる領域の希少資格・スキルを持っているか
業界に長くいると見えてくるのが、この3点の状況によって「どのルートで正社員転職を目指すか」の選択肢が変わってくるということです。
まずは転職エージェントに相談して、自分の現在地を把握することが現実的な最初のステップになります。
2025年に発表された厚生労働省のデータによると、2023年度の民営職業紹介事業所の手数料収入は約8,362億円(前年度比8.6%増)です(*5)。転職支援サービスの利用は増加傾向が続いています。
転職エージェントの数・種類も充実しており、まず相談するだけのコストはゼロです。
*5: 厚生労働省「令和5年度 職業紹介事業報告の集計結果」
「正社員として長く働きたい」なら転職エージェントへ。「今の生活スタイルに合わせて柔軟に働きたい」なら派遣を検討。この2軸が決まれば、どちらを選ぶかは自然に絞られる。現在派遣で正社員を目指しているなら、まずエージェントに相談して自分の状況を整理することが最短ルートになりやすい。
人材業界の経営者へよくある質問

A同じです。「転職エージェント」「人材紹介会社」「人材紹介サービス」は呼び方が異なりますが、すべて有料職業紹介事業に基づくサービスを指しています。企業と求職者をマッチングして直接雇用に繋げる仕組みという点では、どれも同じサービスです。
Q人材紹介(転職エージェント)は本当に無料ですか?
A求職者にとっては完全無料です。職業安定法の規定により、人材紹介会社が求職者から手数料・報酬を受け取ることは認められていません。費用はすべて採用企業が負担する仕組みになっており、求職者が直接支払うものは何もありません。
Q転職エージェントと派遣会社を同時に使うことはできますか?
Aできます。複数のエージェントに登録するのと同様に、転職エージェントと派遣会社に同時登録しても転職活動上の問題はありません。ただし実際のところ、「正社員として転職したい方」と「派遣として柔軟に働きたい方」は目的が明確に異なることが多く、両方同時に利用するケースはそれほど多くない印象です。
Aなれます。方法は主に3つあります。①現在の派遣先企業に直接雇用への切り替えを打診する、②紹介予定派遣に切り替えて直接雇用を前提とした就業を始める、③転職エージェントを利用して別の会社に正社員転職する。「正社員になること」が明確な目標であれば、③の転職エージェント経由が最短ルートになりやすいといえます。
A求職者は負担しません。採用企業が支払う手数料の相場は、採用した方の理論年収の30〜35%が一般的です(法定上限は50%)。仮に年収500万円の方が転職した場合、採用企業の負担は150万〜175万円程度になります。求職者側には一切費用は発生しません。