「人材紹介の営業って具体的にどんな仕事?」という声をよく耳にします。
人材紹介の営業にはいくつか種類があり、それを理解してから入るか知らずに入るかで、仕事の感じ方は大きく変わるものです。
この記事では、人材紹介事業を3社立ち上げてきた著者が、CA(キャリアアドバイザー)・RA(リクルーティングアドバイザー)・両面型それぞれの仕事内容から、きつさの正体、向いている人・向いていない人の実態まで、現場目線で解説します。
「転職を考えているけど自分に合うか不安」という方も、「今の職場を続けるべきか迷っている」という方も、判断材料にしてください。
監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。
人材紹介の営業とはどんな仕事か

人材紹介の営業は、求職者のキャリア支援を担うCA(キャリアアドバイザー)、企業側の採用支援を担うRA(リクルーティングアドバイザー)、その両方を1人で担う両面型の3タイプに分かれます。
担当する相手・求められるスキル・日々の業務の雰囲気が、タイプによって大きく異なります。
まずここを整理しておくと、「きつさ」や「向いている人」の話が理解が深まるでしょう。
キャリアアドバイザーとはどんな役割か
CAとは、転職を考えている求職者に対してキャリア相談を行い、希望に合った求人を紹介するポジションです。
ヒアリングを通じて希望・強み・転職理由を整理し、応募書類の添削や面接対策まで一気通貫でサポートします。
求職者の都合に合わせて動くことが多いため、夕方以降や土日の対応も一般的です。
コミュニケーション能力だけでなく、相手の本音を引き出す傾聴力が特に求められます。
RAとはどんな役割か
RAとは、企業側に対して採用支援を行うポジションです。
新規の企業に営業をかけて求人案件を獲得し、採用ニーズをヒアリングして、自社のデータベースから条件に合う候補者を提案します。
日程調整・合否連絡・条件交渉など、採用プロセス全体を企業側から管理するのがRAの役割です。
法人営業が仕事の中心になるため、テレアポや訪問で新規開拓するフェーズと、既存クライアントとの関係を深めるフェーズが交互に続きます。
両面型とはどんな役割か
両面型は、RAとCAの両方の役割を1人で担うスタイルです。
企業への営業と求職者の支援を自分1人で完結させるため、調整力とマルチタスク力が求められます。
その分、企業のリアルな情報(求人票に載っていない職場の雰囲気・本音の採用条件)を求職者に直接伝えやすいという強みがあります。
中小規模の人材紹介会社や特化型エージェントに多い形態で、成果がインセンティブにダイレクトに反映される設計が多いのが特徴です。
RAは法人対応の圧力、CAは感情労働の消耗、両面型はその両方が同時にかかります。「人材紹介の営業がきつい」という声の多くは、このタイプ別の構造的なきつさを指しています。転職先を選ぶ際は、どのタイプかを事前に確認しておくと心構えができます。
人材紹介の営業がきついと言われる理由

人材紹介の営業がきついと言われる背景には、成果が出るまでのリードタイムの長さ、企業・求職者双方への同時対応、そして相手の人生に関わる感情労働(精神的・感情的な消耗を伴う対人業務)の重さがあります。
どれか一つが重なるだけでも消耗しますが、実際にはこれらが同時にかかってくるところにしんどさがあります。
成果が出るまでのリードタイムが長い
人材紹介は「入社が決まって初めて売上が立つ」成果報酬型のビジネスです(*1)。
求人案件の獲得から、求職者とのマッチング、選考プロセス、内定、入社承諾まで、早くて1〜2ヶ月、長いと3〜6ヶ月かかることも珍しくありません。
その過程で求職者が応募を辞退したり、内定後に別のオファーに乗り換えたりすることもあります。
頑張った量が数ヶ月後にしか結果として出てこない構造のため、入社直後に「やったことが見えない」という感覚を持ちやすく、精神的に消耗する人が多いです。
*1: 厚生労働省「有料職業紹介事業について」
企業と求職者の二軸対応が同時にかかる
RAはクライアント企業の採用ニーズの変化に即対応しながら、候補者とのスケジュールも同時に管理する必要があります。
両面型になると、それを1人でこなすことになります。
採用する側のニーズと転職する側の希望が必ずしも一致しない中で、双方が納得できる着地点を探し続ける調整の連続が、この仕事の疲弊感の一つの正体です。
人材紹介の事業所数は2023年度時点で全国30,113件(*2)まで増加しており、競合が多い中での新規開拓プレッシャーも続いています。
*2: 厚生労働省「令和5年度 職業紹介事業報告書の集計結果」
感情労働の重さが想定以上にかかる
人材紹介の営業は、求職者の不安・焦り・迷いを正面から受け止め続ける仕事です。
「内定が出たのに辞退したい」「やっぱり転職をやめたい」という連絡が突然来ることもあります。
これまで多くのCAと一緒に働いてきた中で感じてきたのは、成果が出ないことよりも「期待に応えられなかった」という感覚のほうがつらい、という人が多いということです。
そのプレッシャーが毎日続くため、感情の消耗が激しくなる時期が誰にでも来ます。
「なぜきつくなるか」を先に理解しておくと、しんどい時期に「自分だけがおかしいのか」と追い詰められにくくなります。リードタイムの長さ・二軸対応・感情労働は、この職種の構造的なきつさ。個人の問題ではありません。
人材紹介の営業のやりがいと魅力

人材紹介の営業のやりがいは、きつさと切り離せないところにあります。
転職が成功したとき、それは求職者本人のキャリアだけでなく、家族の収入・生活・将来にまでじわじわと影響が広がる体験です。
そのことを実感すると、しんどい仕事でも続けたい気持ちが強くなる人が多いです。
人の転職成功に立ち会える達成感
「あなたのおかげで年収が上がって、家族と旅行に行けるようになりました」という言葉が、この仕事を続けるモチベーションになったという話を、現場で何度も聞いてきました。
転職は個人の出来事ですが、その影響は家族の生活にまで波及します。
人の人生の分岐点に立ち会い、その後を少し良い方向に動かせた実感は、他の営業職ではなかなか得られない体験です。
インセンティブで努力が収入に直結する
人材紹介の報酬体系は「固定給+インセンティブ(変動給)」が一般的で、成果が収入にダイレクトに反映されます。
人材紹介の紹介手数料は求職者の年収の30〜35%程度が相場で、成約1件あたりの売上インパクトが大きい構造です。
人材サービス業界の想定年収は平均約560万円で、全産業平均(約430万円)を上回る水準にあります(*3)。
「やった分だけ稼げる」環境がモチベーションになる人にとっては、強いやりがいになります。
*3: リクルートエージェント「人材サービス業界の想定年収」
市場価値の高いスキルが身につく
人材紹介の営業を経験すると、ヒアリング力・提案力・交渉力・法人営業スキルが同時に磨かれます。
これらは業界を問わず評価されるスキルセットで、転職市場での選択肢が広がります。
また、複数の業界の採用動向や求職者のキャリア設計を間近で見続けることで、業界横断の広い視野が身につくのも特徴です。
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向いている人・向いていない人の特徴

向いている人と向いていない人の差は、スペックよりも入社後の行動パターンに出ます。
採用する側の視点で言うと、学歴・前職の職種よりも「うまくいかない場面での反応」のほうが、長期的な活躍を予測するうえで正確です。
向いている人の特徴
以下のような特徴を持つ人が、長く活躍する傾向があります。
成果が出ない時期に、自分のやり方を振り返って変えられる
周りの成果を出している人のやり方を素直に吸収できる
泥臭い行動(架電数を増やす・資料を作り直す)を厭わない
求職者・企業のどちらにも誠実に向き合える
数字を追いながらも、人への関心が薄れない
なかでも、「成果を出している人の話を積極的に聞きに行く」という行動が取れるかどうかは、入社後の成長速度に大きく影響します。
自分のやり方にこだわらず、うまくいっている人のやり方をどんどん取り入れられる人が、この仕事で伸びていきます。
向いていない人の2つのパターン
うまくいかずに早期に離職する人には、共通するパターンが2つあります。
パターン①|前職のやり方に固執するタイプ
「まずは自分のやり方でやっていいですか?」という言葉を最初に口にする人は、要注意です。
自分のキャリアや経験への自信は悪いことではありませんが、人材紹介は「商品を売る」感覚では通用しない仕事です。
前職で実績があるほど適応に時間がかかる傾向があり、自己流にこだわっている間に成果が出ずに消耗してしまうケースをよく見てきました。
パターン②|他責思考が強いタイプ
何かフィードバックをすると、「この求職者が悪い」「この求人の条件が悪い」「そのやり方は研修で教えてもらっていない」という言葉が最初に出てくる人は、成長のサイクルに入りにくい傾向があります。
仕事では100%の条件が揃うことはありません。
今の状況で自分なりのベストを出そうとする姿勢があるかどうかが、長続きするかどうかの分岐点です。
前職のやり方への固執・他責思考は、気づいて直せれば成長の余地があります。「うまくいかないのは自分のせいか、環境のせいか」を冷静に書き出してみるのが、最初の一歩です。両方を認めることで、変えられる部分が見えてきます。
向いていなくても活躍できた人の共通点
入社当初は「自分に向いていないかも」と感じていた人でも、長く活躍するケースがあります。
共通しているのは、「とにかく成果を出したい」という熱量の高さです。
才能やセンスがなくても、熱量で行動量を補える人は、時間はかかっても確実に結果につながっていきます。
また、苦労を経験した人は、パフォーマンスが出ない部下を支援するマネージャーとして後から際立つことが多い傾向もあります。
自分が苦しんだ場所から出る方法を、体験として持っているからです。
人材紹介の営業のキャリアと年収

人材紹介の営業の年収は、固定給だけ見ると他の営業職と大きく変わりませんが、インセンティブ次第で大きく変動します。
成果が収入に直結する設計のため、自分の頑張り次第で同年代の平均を上回ることも十分可能です。
年収レンジとインセンティブの仕組み
人材サービス業界の想定年収は平均約560万円で、全産業平均(約430万円)を上回る水準にあります(*3)。
ただし、会社の規模・インセンティブ設計・個人の成果によって差が大きいため、あくまで参考値として捉えてください。
経験レベル別の年収目安は以下のとおりです。
インセンティブの設計は会社によって大きく異なり、「月間売上の15〜20%を還元」「粗利の20%を月次還元」など、計算方式もさまざまです。
転職前に「自分と似たバックグラウンドの入社実績と年収」「インセンティブの具体的な計算方法」を必ず確認しておくことが重要です。
キャリアアップの主な選択肢
人材紹介の営業経験を活かしたキャリアパスには、以下のような選択肢があります。
人材業界内でのキャリアアップ(シニアCA・リーダー・マネージャー・部門長)
事業会社の人事・採用担当への転身(エージェント出身は即戦力評価が高い)
別の転職エージェントへの移籍(特化型への転向が多い)
キャリアコンサルタントとして独立・フリーランス
人材紹介会社の起業・経営
現在、中途採用で必要な人数を確保できた企業は40.3%にとどまり、57.8%の企業が採用課題を抱えている状況です(*4)。
採用支援の専門知識を持つ人材は、引き続き高い需要があります。
*4: リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2024年度上半期)」
転職市場で評価されるスキルセット
人材紹介の営業経験は、業種・職種を問わず評価されるスキルを多数含んでいます。
法人営業スキル(ヒアリング・提案・クロージング)
求職者との信頼構築・傾聴力
複数案件の同時進行管理
業界横断の知識・視野
特に「人事職への転職はしやすい」という評価は業界内外で定着しており、採用担当・HRBP(人事ビジネスパートナー)として事業会社に転じるルートは、CA・RA経験者の定番の選択肢になっています。
人材会社の経営者へよくある質問

Aなれます。人材紹介の営業に特別な資格は必要なく、多くの会社が未経験歓迎で採用しています。
営業経験や接客経験があると選考で有利になるケースが多いですが、必須ではありません。
国家資格「キャリアコンサルタント」を取得すると、CA職としての専門性をアピールしやすくなります。
Aきつさは本物ですが、「きつい時期を乗り越えた人は比較的長く活躍する」というパターンも見られます。全国平均の離職率は14.2%(2024年)ですが(*5)、人材業界は転職市場の変動や成果報酬のプレッシャーもあり、やや高い傾向があります。
向いている人にとっては乗り越えられる壁であり、乗り越えた先に強いやりがいがある仕事です。
*5: 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」
Aどちらが向いているかは、その人の強みによります。法人折衝・交渉が得意な人にはRAが向いており、傾聴・カウンセリング型のコミュニケーションが得意な人にはCAが向いています。
両面型は双方のスキルが身につく分、難易度は上がります。
最初はどちらか一方に特化した環境で基礎を積むのが、多くの場合遠回りのようで近道です。
A必須ではありませんが、持っていると有利になります。最もおすすめなのは国家資格「キャリアコンサルタント」で、求職者への信頼感が高まるほか、選考時に専門性のアピールになります。
「キャリアコンサルティング技能検定(1・2級)」「産業カウンセラー」なども取得を目指す人が多い資格です。