転職活動を始めたとき、「エージェントを無料で使える」と聞いて、疑問を持ったことはないでしょうか。
「なぜ無料なのか」「誰かがお金を払っているはずなのに、どこかで損をしていないのか」という不安を感じるのは自然なことです。
そして、もしあなたがCA(キャリアアドバイザー)への転職を考えているなら、手数料の仕組みを理解することはさらに大きな意味を持ちます。
手数料の構造を知ることで、CAという仕事の「どこで収益が生まれ、自分のインセンティブにどう連動するか」が具体的に見えてくるからです。
この記事では、3社の人材紹介会社を立ち上げてきた経験をもとに、手数料の相場・仕組み・リファンドの実態・そしてCA転職後のインセンティブとの連動まで、業界の内側からお伝えします。
監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。
人材紹介の手数料とは?転職者が無料で使える仕組み

人材紹介の手数料とは、人材紹介会社が採用企業から受け取る報酬のことです。
求職者から手数料を徴収することは、職業安定法によって原則禁止されています(*1)。
そのため転職者は無料でエージェントを利用できる仕組みになっており、費用はすべて採用した企業が負担します。
相場は採用者の理論年収の30〜35%程度で、採用が決まった時点で初めて発生する「成功報酬型」が一般的です。
*1: 厚生労働省「有料職業紹介事業の手数料制度」
転職者が無料で使える法的な理由
転職エージェントが無料で使える根拠は、職業安定法に規定されています。
求職者からの手数料徴収を原則禁止とし、費用負担はすべて採用企業側に課す構造になっています。
この規定があるため、どんな転職エージェントを使っても、転職者が費用を請求されることはありません。
ただし、ごく一部の求人(家事使用人・芸能人など特定職種)では例外として求職者側の手数料が認められているケースがあります。
一般的な転職活動においては「無料で使える」と理解して問題ありません。
企業が支払う「成功報酬型」の基本構造
人材紹介の手数料は、採用が成立したときのみ発生する「成功報酬型」が主流です。
採用を依頼した時点では費用は発生せず、紹介した人材が入社を決めた段階で手数料が生じます。
計算式はシンプルで、「理論年収×料率」で算出されるのが基本です。
たとえば年収500万円の人材が入社した場合、料率35%なら手数料は175万円になります。
このモデルは採用企業にとって「成果が出なければ費用ゼロ」という安心感があり、人材紹介が広く使われている理由の一つです。
採用が決まったときだけ費用が発生する仕組みのため、企業は「採用できなかったのにお金を払った」という状況を避けられます。転職者にとっても「利用料ゼロ」が保証されるため、双方にメリットがある構造です。
人材紹介の手数料制度には2種類があります。「上限制手数料」は賃金の10.5%が上限で、主に家政婦や家事使用人など特定の職種に適用されます。「届出制手数料」は人材紹介会社が料率をあらかじめ届け出る制度で、上限50%まで設定可能。一般的な転職市場で使われる手数料のほとんどはこの届出制手数料です。
一般的な転職市場では、届出制手数料が主流です。
人材紹介会社がハローワークに料率を事前に届け出る仕組みで、上限は理論年収の50%と定められています(*1)。
ただし50%近い手数料を設定している会社は少なく、相場は30〜35%に落ち着くのが実際のところです。
相場がこの水準になる背景については、次のセクションで詳しく解説します。
手数料の相場が「理論年収の30〜35%」になる根拠

手数料の相場が30〜35%に落ち着いているのは、人材紹介会社のコスト構造と深く関係しています。
成功報酬型のビジネスモデルでは、紹介して採用に至らなかった案件のコストも、成約件数で回収しなければならない構造があります。
CA人件費・求人データベースの維持費・求職者への対応工数など、売上に転換しないコストが積み重なるため、相応の手数料率が必要になるのです。
人材紹介会社のコスト構造と利益率の実態
あくまで著者が複数社の経営・立ち上げを通じて見てきた肌感覚ですが、人材紹介会社の利益率は15〜35%程度に落ち着くことが多い傾向があります。
利益率の幅が大きいのは、CAのパフォーマンスによって売上・利益率が大きく変動する「属人性の高さ」によるものです。
優秀なCAが多い会社は高い成約率を維持でき、利益率も上振れします。
一方、立ち上げ期や採用難易度が高い領域では利益率が低くなりやすい傾向があります。
こうした利益率の高低が、そのまま採用力の差に直結するのです。
経営者にとっては「利益率が高いから優秀なCAを高い年収で採用できる」インセンティブが生まれやすく、それが業界全体の年収水準を押し上げる構造につながっています。
「理論年収」の定義と計算方法
理論年収とは、採用された人材が1年間に受け取る報酬の総額のことです。計算式は「月給×12ヶ月+固定賞与+想定インセンティブ」が基本です。残業代・交通費・社会保険料の会社負担分は通常含みません。人材紹介の手数料はこの理論年収に料率をかけて算出されます。
手数料の計算基準になる「理論年収」には、月給・賞与・固定手当が含まれます。
月給×12ヶ月+固定賞与で算出するのが基本で、残業代や交通費は通常含まれません。
たとえば月給35万円・賞与2ヶ月分の場合、理論年収は「35万円×14ヶ月=490万円」となり、料率35%なら手数料は約171.5万円です。
インセンティブ制度がある場合は、想定インセンティブを加算して計算するケースもあります。
手数料率が会社によって20〜40%以上と幅がある理由
手数料率が会社によって異なるのは、取り扱う職種の採用難易度と競合状況によって決まるためです。
医師・弁護士・上場企業の役員クラスなど採用難易度が高い職種では、40%以上の料率を設定する会社もあります。
一方、競合エージェントが多く差別化が難しい汎用的な職種では、料率を下げることで選ばれやすくする戦略を取る会社もあります。
特化型エージェントが高い手数料率を維持できるのは、その領域で競合が少なく採用企業の選択肢が限られているためです。料率の高さは、その会社が市場で持つ差別化ポジションを反映していると見ることができます(*2)。
*2: リクルートエージェント「人材紹介の手数料の仕組み・相場」
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手数料の仕組みを知るとキャリアアドバイザーの仕事が見えてくる

ここからが、CA転職を考えている方に特に読んでほしいセクションです。
手数料収入は、CAのインセンティブを設計する際の原資そのものです。
成約1件の手数料がいくらになるか・そのうち何%がCAに還元されるかによって、同じ件数の成約でも年収が大きく変わります。
手数料の仕組みを入社前から理解しているかどうかで、入社後の仕事への向き合い方が変わることは、現場を見てきた感覚として実感しています。
成約1件で会社にいくら入るか?手数料とCAの関係
たとえば年収600万円の転職者が成約した場合、料率35%であれば手数料は210万円が会社に入ります。
月の成約件数が3件あれば、その月の売上は630万円になる計算です。
CAのインセンティブは、この売上(手数料収入)の一定割合として設計されることが多い傾向があります。
著者が見てきた中小の人材紹介会社では「月間売上の15〜20%をインセンティブとして還元」というシンプルな設計が多く、上記の例であれば月間94.5〜126万円がインセンティブ原資になります。
成約1件あたりの手数料が大きいほど、同じ件数でも自分に入るインセンティブは大きくなるという逆算の視点を入社前に持てると、会社選びの見え方が大きく変わるでしょう。
会社規模別のインセンティブ設計パターン3つ
インセンティブ設計は会社によって大きく異なり、入社前に確認しておかないと「想定と違った」となりやすい部分です。
大きく3つのパターンに分けて考えると整理しやすくなります。
固定給重視型(月25〜60万円)
インセンティブの比率が低く、安定志向の設計です。年収レンジは400〜800万円程度になりやすい傾向があります。
成果が出なくても一定の収入が確保される反面、高インセンティブを狙いにくい構造です。
インセンティブ重視型(月20〜30万円固定)
固定給を低めに設定し、成果に応じた還元を最大化する設計です。年収1,000万円以上も狙える構造ですが、成果が出ない期間の収入が低くなるリスクもあります。
グレード評価型
月間売上に応じてグレードが変わり、固定給+インセンティブの組み合わせが変動する設計です。
評価制度・インセンティブの詳細は求人票や転職エージェントにすら開示されないケースがほとんどなため、面談時に直接確認することが重要です。
大手エージェントと特化型エージェントのインセンティブ構造の違い
大手エージェントは主に片面型(CA専任)が多く、成約件数でインセンティブが決まる階段式ランク制度を採用しています。
年収レンジは450〜650万円が中心で、年収1,000万円を狙うには管理職ルートに進む必要があります(*3)。
一方、エッセンシャルワーカー(物流・介護・建設など)に特化した中小エージェントは、取り扱う職種の競合が少ないため手数料率を高く維持しやすい構造があります。
1成約あたりの手数料収入が相対的に大きく、CAへの還元率も高くなりやすい傾向があります。
両面型(CA+RA(リクルーティングアドバイザー)兼任)が多く、売上全体に連動したインセンティブ設計になるため、個人のパフォーマンスが年収に直結しやすいのも特徴の一つです。
*3: doda「人材紹介の手数料相場とは?仕組みと計算方法」
成約1件がいくらの手数料を生み、そのうちいくらが自分に還元されるか。この逆算を入社前に理解しているかどうかで、会社選びの視点が変わります。「何件成約すれば年収はいくらか」を具体的にイメージできるCAほど、入社後の立ち上がりが早い傾向があります。
リファンド(返金規定)の実態とキャリアアドバイザーが知っておくべきこと

リファンドとは、入社した人材が短期間で退職した場合に、企業が支払った手数料の一部が人材紹介会社に返金される制度のことです。
一般的には入社後3〜6ヶ月以内の退職が対象で、期間が短いほど返金割合が高く設定されています。
競合記事の多くは「90〜180日・段階的返金」という一般論で終わっていますが、実態は職種や業界によって返金期間の目安が大きく異なります。
CAとして働く以上、リファンドの仕組みは入社前から把握しておくべき知識の一つです。
リファンドの基本的な仕組みと返金期間の目安
リファンドの計算は「手数料×返金率」で算出されます。
たとえば手数料150万円・入社1ヶ月以内の退職で返金率70%なら、企業への返金は105万円になります。
返金率は入社からの経過期間が長くなるほど低下する設計が一般的で、段階的に下がっていく構造です。
入社後3ヶ月を超えると返金対象外になる会社が多い一方、高単価な職種では6ヶ月まで保証するケースもあります。
リファンドが発生した案件は成約件数として残りますが、実質的な売上が減少するため、インセンティブ計算への影響が出る場合もあります。
ホワイトカラーとエッセンシャルワーカーで返金期間が異なる理由
現場の感覚として、職種によって返金保証期間の目安には明確な差があります。
ホワイトカラー(事務・営業・管理職など)
著者の経験上、ホワイトカラー職種では最大120〜180日程度まで返金対象とする会社が多いですが、各社の契約条件に依存するため、必ず入社前に確認してください。
紹介単価が高く、採用企業が定着サポートを重視するため、長めの保証期間を設定する会社が多いのが実態です。
エッセンシャルワーカー(介護・物流・建設など)
最大60〜90日程度が目安になることが多い傾向があります。
業界全体の離職率が高いため、人材紹介側がリスクを限定する目的で短めに設定するケースが多い傾向があります。
取り扱う職種によって返金期間を事前に確認しておくことは、CAとして働く際の重要な知識の一つです。
もめやすい「グレーゾーン」のケースとキャリアアドバイザーが取るべき対策
リファンドで最もトラブルになりやすいのは、「求職者の自己都合退職」と「企業の受け入れ環境の問題」が絡み合う場合です。
求職者が「仕事が思っていたものと違った」と退職したとき、企業側が「説明と違う人材だった」と主張するケースが起きやすい構造があります。
どちらの責任か判定が難しく、エージェントが板挟みになりやすい状況です。
このトラブルを防ぐために重要なのは、入社前に求職者と企業の双方の期待値をできる限りすり合わせることです。
求職者に対しては「仕事内容のどこが想定と違ったか」を面談で具体的に確認しすることが大切です。\n企業に対しては「どんな場面で活躍してほしいか」を言語化しておくことが、CAとして長く活躍するうえでの土台になります。
リファンドはCAのコントロール外で起きることもありますが、「早期退職リスクが高い求職者」を事前に見極める目と、入社前の期待値のすり合わせで大幅に予防できます。リファンド件数が少ないCAは、採用企業からの信頼が高く、優良案件を紹介してもらいやすくなる傾向があります。
手数料の視点から見えるエージェント選びの判断軸

CA転職を考えている方にとって、「どの人材紹介会社でCAとして働くか」は年収と働き方を左右する重要な選択です。
手数料の仕組みを理解したうえで会社を選ぶと、求人票だけでは見えない判断軸が見えてきます。
手数料率×取り扱い職種の競合状況×インセンティブ設計の3軸を合わせて確認することが、入社後に後悔しないための基本になります。
手数料率と競合状況がキャリアアドバイザーのインセンティブを左右する理由
手数料率が高く、競合エージェントが少ない領域を扱う会社は、1成約あたりの収益が大きくなりやすく、CAへの還元率も高くなりやすい傾向があります。
逆に、競合エージェントが多い汎用的な職種では手数料交渉で値下げを求められやすく、1成約あたりの収益が下がりやすい構造があります。
大手に比べて中小特化型の人材紹介会社は、特定領域での強みがあるため料率を高く設定しやすいという特徴です。
入社を検討する際は、その会社が取り扱う職種の競合状況を確認することが重要です。
エッセンシャルワーカー特化型が狙い目な理由
エッセンシャルワーカー(物流・介護・建設・製造など)に特化したエージェントは、大手が参入しにくい領域で独自のポジションを築いているケースが多い傾向があります。
競合が少ないため手数料率を維持しやすく、CAへの還元率も安定しやすい特徴があります。
また、ホワイトカラー全職種対応の大手エージェントに比べると、立ち上がりが早い点も特化型の強みの一つです。
業界知識のキャッチアップが進みやすく、入社後1〜2ヶ月目から成約が出るケースも少なくありません。
入社後のワークライフバランスという観点でも、エッセンシャルワーカー特化型は求職者の面談が昼間に集中しやすいため、夜間・休日の稼働が少なくなりやすい傾向があります。
「入りやすいが失敗すると出づらくなる」リスクの正体
人材業界は確かに入りやすいです。
ただし「入りやすい」ことと「うまくいく」は全く別の話です。
成果が出づらい会社に入ると、インセンティブが下がり続ける構造にはまるリスクがあります。
具体的には、次のような会社が要注意です。
成果が出ない期間が続いたまま転職活動をすると、次の会社から「実績がない」として低い年収を提示されやすくなるリスクが生まれます。
入口のしやすさだけで選ぶのではなく、育成体制・取り扱い職種の成約しやすさ・インセンティブ設計の具体的な数値を入社前に確認することが、CA転職で後悔しないための判断軸です(*4)。
*4: doda「人材紹介サービスの手数料の相場は?算出方法と返還金について解説」
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人材紹介の手数料に関するよくある質問

Q転職エージェントを使うと転職者にお金がかかることはある?
A職業安定法により、人材紹介会社が転職者(求職者)から手数料を受け取ることは原則禁止されています。転職者が費用を請求されることはなく、すべての費用は採用した企業が負担する仕組みです。
家政婦・芸能人など一部の特定職種は例外ですが、一般的な転職活動では無料で利用できます。
Q手数料が高いエージェントと低いエージェントで信頼性に違いはある?
A手数料率の高さと信頼性は直接の関係はありません。手数料率が高いのは、取り扱う職種の採用難易度が高い・競合が少ないという理由が多く、信頼性の高低を示す指標ではありません。
信頼性を見極めるには、担当CAの対応の丁寧さ・求人の情報量・面談後のフォロー体制などを確認することが重要です。
Qリファンドが発生するとキャリアアドバイザーのインセンティブや評価に影響する?
Aリファンドが発生した場合、インセンティブの計算から除外されたり、評価に反映されたりする仕組みを採用している会社もあります。会社によって扱いが異なるため、入社前に評価制度の詳細を確認することをおすすめします。
リファンドを防ぐためには、入社前に求職者と企業双方の期待値をしっかりすり合わせることが最も重要です。
A人材紹介の手数料は、採用が成立した際に理論年収の30〜35%を一括で受け取る「成功報酬型」が基本です。一方、人材派遣は派遣社員の稼働時間に応じた「マージン」を継続的に受け取る仕組みです。
収益の安定性という点では人材派遣のほうが安定しやすいですが、1案件あたりの収益が大きくなりやすいのは人材紹介と言えます。
CAとして転職する場合、人材紹介のほうが個人の成果がインセンティブに直結しやすい特徴があります。
※本記事に記載の年収・転職事例は、著者の経験や各種調査データをもとにした参考情報です。実際の転職結果は個人のスキル・経験・入社先の報酬設計によって異なります。転職の判断は、個別の状況を踏まえたうえでご検討ください。