「人材業界って、年収は高いの?低いの?」と調べているとき、おそらく相反する情報に混乱しているはずです。
「20代で年収1,000万円も夢じゃない」という求人広告を見たかと思えば、「人材業界は年収が低い」という口コミも目にする。
どちらも嘘ではありません。
ただ、どちらも「文脈」を省略しています。
この記事では、人材紹介事業を3社立ち上げてきた経験をもとに、「なぜ同じ人材業界でここまで年収に差が出るのか」を経営目線でまっすぐ解説します。
事業形態・会社規模・職種ごとのデータを整理しながら、「自分が人材業界に入ったら年収はどうなるのか」を判断できる情報をお届けします。
転職を考えている方も、現在人材業界で年収アップを狙っている方も、ぜひ参考にしてみてください。
監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。
人材業界の平均年収は約525万円だが幅が大きい

人材業界の平均年収は、各種調査によると525〜530万円前後です(*1)。
日本全体の平均年収(478万円)を上回る水準ですが、この数字だけを見て「やや高め」と判断するのは早計でしょう。
同じ「人材業界」でも、事業形態・会社規模・職種によって300万円台から1,000万円超まで大きく差があるのが実態で、平均値はその幅を見えにくくしています。
「稼げる」という話と「年収が低い」という話、どちらも人材業界で働く人から聞こえてきます。
その理由は単純で、業界が一枚岩ではないからです。
大手人材会社の企画職で安定した年収600万円を得ている人もいれば、ベンチャーの人材紹介でインセンティブ込みで30代前半に1,000万円を超える人もいる。
一方で、未経験から人材派遣会社の営業担当として入社し、3年たっても年収350万円前後というケースも珍しくありません。
また、日本全体の平均年収は478万円です(*2)。
人材業界全体で見ると「やや高め」という表現は間違いではないでしょう。
ただ、その平均を引き上げているのは一部の大手企業や高インセンティブ型の人材紹介会社であり、業界全体が高い水準にあるわけではないことは理解しておく必要があります。
*1: リクルートエージェント「人材業界の想定年収」
*2: 国税庁「民間給与実態統計調査 2025年」
「人材業界の平均年収は〇〇万円」という数字は、事業形態・会社規模・職種がすべて混ざった平均です。自分がどの事業形態・どの職種で働くかによって、その数字とは大きくかけ離れることがあります。まずは「何の平均か」を確認する習慣をつけましょう。
事業形態で年収がここまで変わる理由

同じ人材業界でも事業形態によって年収水準が変わる背景には、「事業ごとの利益率の違い」と「個人のパフォーマンスが成果にどれだけ反映されるか」という2つの要因があります。
年収の高い順で整理すると、人材紹介(エージェント)が最も高くなりやすく、次いで求人広告、人材派遣という順になるケースが多いです。
HR Tech(人事・採用のデジタル化を支援するSaaS型サービス)は、資金調達の有無によって異なります。
実際に人材紹介の現場で事業を立ち上げてきた中で感じるのは、事業形態の違いが年収を決める最大の変数だということです。
スキルや努力量が同程度でも、どの事業形態の会社に入るかで年収は大きく変わります。
人材紹介の年収が高くなりやすい理由
人材紹介(エージェント)とは、求職者と採用企業のマッチングを支援し、入社が決まった時点で企業から報酬を受け取るビジネスモデルです。
利益率は一般的に15〜35%程度に落ち着くことが多く、他の事業形態と比べて高い水準にあります(*3)。
さらに重要なのが、現場のCA(キャリアアドバイザー)個人のパフォーマンスによって、売上や利益率が大きく変動するという点です。
つまり、担当者個人の力量で売上が大きく変わる、属人性の高い事業です。
経営者の立場で考えると、この構造は明快です。
「利益率が高いから、優秀な人材を高い年収で採用しよう」「頑張った人には報いよう」という意思決定が自然に生まれます。
結果として、業界の中で年収の相場が高くなりやすい。
インセンティブ設計も整いやすく、成果を出せば出すほど年収が上がる環境になるのが人材紹介事業の特徴です。
CA(キャリアアドバイザー)・RA(リクルーティングアドバイザー)とは CAは求職者側の担当者で、面談・求人提案・内定後のフォローまでを行う。RAは採用企業側の担当者で、求人獲得・採用要件のヒアリング・候補者の推薦を行う。両方を一人が担う「両面型CA」と、それぞれ専任で担当する「分業型(片面型)」に分かれる。
求人広告の年収が下がってきている背景
求人広告事業は、以前は「掲載するだけで収益が生まれる」安定したモデルでした。
しかし、状況が変わってきています。
求人広告を出しても採用できないという企業が増え、「掲載したけど採用できなかった」という不満が広がり、純粋な掲載型の売上が立ちにくくなっているからです。
その結果、多くの媒体が掲載料無料・採用決定時に費用が発生する「成果報酬型」にシフトしつつあります。
ホットペッパービューティーワークも最近そのモデルに変更した事例のひとつです。
成果報酬型にすれば契約数は増えますが、媒体上の競争が激化し、1社あたりの採用数が減り、顧客離れが起きやすくなります。
この構造的な変化が、求人広告会社の年収を徐々に押し下げる要因になっています。
求人広告会社への転職を検討している場合は、この業態の変化を踏まえたうえで個社の状況をよく確認することをおすすめします。
HR Techは「資金調達の有無」で変わる
HR Techは少し例外的な動きを見せます。
自己資金で運営しているHR Techは年収が低くなりがちです。
SaaS型ビジネスは、数年間赤字を垂れ流しながら契約数を積み上げ、その後に黒字化するモデルです。
赤字幅をできるだけ抑えながら契約数を最大化するために、人件費を低く抑える経営判断になりやすい。
一方、VC(ベンチャーキャピタル)等から資金調達をしている場合は、多少の赤字拡大を許容してでも契約獲得スピードを優先するため、採用に投資できます。
ただし、無駄に赤字幅を広げるメリットはないので、インセンティブが大幅に上がるケースは限られるのが現実でしょう。
「資金調達済みのHR Tech企業だから稼げる」と単純に考えず、給与体系の中身を確認することが重要です。
人材派遣の年収が大きく上がりにくい理由
人材派遣でも正社員の人材紹介と同じように、人と企業をマッチングします。
しかし派遣の場合は、「毎月20名紹介すれば3名決まる」という形で、個人の能力による成果の差が生まれにくいビジネスモデルです。
その理由は採用企業側の事情にあります。
派遣社員は契約を終了できる(社員を切れる)ため、採用ハードルが低く、「ひとまず枠を埋める」判断になりやすい。
正社員の人材紹介では「スキルと自社カルチャーに合う人材を採用したい」という要件があり、エージェントの提案力・営業力が問われます。
派遣の場合、そのハードルが相対的に低いため、誰がやっても一定の成果が出やすいモデルになります。
私、経営者の視点では、「誰がやっても同じ成果が出るなら、高い年収で採用するインセンティブが弱い」という判断になります。
もちろん例外は存在しますし、一般的な営業職と比べてインセンティブが充実しているケースもあります。
ただし、正社員の人材紹介と比較したときに年収が伸びにくい構造にある点は、理解しておいてよいでしょう。
人材紹介(エージェント)が最も年収が高くなりやすい。求人広告は構造変化で下落傾向。HR Techは資金調達状況次第。人材派遣は安定感はあるが大きく上がりにくい。これが業界内の年収格差を生む構造的な背景です。
*3: ひとキャリ「人材紹介会社のインセンティブ制度について徹底解説」
企業規模・職種別の年収レンジ

大手企業ではリクルートホールディングスが約997万円、パーソルホールディングスが約703万円、JACリクルートメントが約668万円と高水準です(*4)。
外資系や特化型のエージェントではエンワールド・ジャパンが約991万円という数字も出ており(*4)、外資系人材会社の水準の高さが際立ちます。
職種別では、企画職や経営コンサルタント職が700〜900万円台に達する一方、営業職のメンバークラスは450〜550万円前後が多く、同じ会社内でも役職・職種によって大きな差が生まれます。
ただし、大手企業に入れば安定して高い年収が保証されるとは限りません。
大手でも事業部・職種によって年収にはばらつきがありますし、インセンティブ設計が薄い部署では成果を出しても年収が上がりにくいケースもあります。
名前で会社を選ぶのではなく、どの事業部でどういう評価制度のもとで働くのかを確認することが重要です。
職種別で見ると、JACリクルートメントがハイクラス転職者向けに集計したデータでは、経営・事業企画職が約981万円、コンサルタント職が約884万円、管理職が約940万円という数字が出ています(*5)。
ただし、これはハイクラス転職者ベースのデータです。
業界全体の営業メンバークラスは450〜550万円程度が現実的なレンジと考えたほうがよいでしょう。
*4: OpenWork「人材サービス業界 年収ランキング 2026年1月最新」
*5: JAC Recruitment「人材業界の年収ガイド」
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人材業界で年収が上がる人・上がらない人の特徴

人材業界で年収が上がる人と上がらない人を分けるのは、能力の差よりも「姿勢の差」である場合がほとんどです。
自責で考えられるか、地道なことを厭わないか、成果を出している人のやり方を素直に取り入れられるか。
これらの姿勢が揃っている人ほど、年収が伸び続ける傾向があります。
これまで多くのCAと一緒に働いてきた中で、入社時点のスペックよりもこの「姿勢」の部分が年収の伸びに直結していると感じることが繰り返しありました。
逆に、経験豊富で地頭が良くても年収が伸び悩む人に共通して見えるパターンがあります。
年収が上がらない人に共通するパターン:
逆に、年収が上がる人に共通するパターン:
採用する側の視点で言うと、経営者が「年収を上げたい」と思う社員には共通した特徴があります。
ひとつは強い売上拡大意欲があること。もうひとつは、少なくとも3年以上は自社で長く働いてくれる意欲があることです。
この2つが揃っている人には、経営者として自然と「もっと報いたい」という気持ちが生まれます。
逆に言えば、いつ辞めるかわからない人への大幅な年収アップは、経営判断として難しいということでもあります。
これは「ずっと会社にいることが正解」という意味ではありません。
「今の会社で腰を据えて結果を出す気がある人かどうか」が、経営者から見た年収を上げる判断基準になるということです。
人材業界の年収は、会社やマーケット頼みより「自分の動き方」で決まる部分が大きいです。同じ会社・同じポジションでも年収に何百万円もの差がつくのが人材業界の特徴です。まず自分のアプローチを変えることが、最初の一手になります。
AI時代に人材業界の年収はどう変わるか

AIの台頭で、人材業界の年収格差はさらに広がると見ています。
条件マッチングや提案書作成をこなすだけの「御用聞き型」のポジションはAIに代替が進み、年収が下がっていく一方です。
求職者・企業の本音を引き出して信頼関係を築ける人は、AIに強化されて年収が上がっていきます。
正直なところ、この変化はすでに始まっています。
以前は「このエージェントに頼めば求人票の整理や候補者リストアップが早い」という便利さが評価されていました。
今はその「便利さ」自体がAIに代替されつつあります。
年収が下がる「御用聞き型」ポジション
以下のような業務は、今後AIによって効率化が進む領域です。
御用聞き型のCA、つまり「言われたことをこなすだけ」のポジションは、差別化が難しくなり年収が下がっていく可能性が高いと感じています。
また、扱っている職種自体がAIに代替される事業領域も注意が必要です。
事務職の紹介・派遣や単純なコーディング業務を主力にしているエージェントは、そもそものマーケットが縮小していく構造的なリスクを抱えています。
年収が上がる「本音を引き出せる」ポジション
一方で、求職者の本音・潜在的な悩みを引き出して言語化できる人は、AIに代替されるどころか、AIを使って生産性を高めながら年収を上げていく側に回れます。
「このエージェントに話すと、自分でも気づいていなかったことがわかる」という価値は、AIには出せないものです。
具体的には、以下のような能力が今後さらに評価されます。
AIとの共存が前提になる時代、この「人間にしかできない価値」に集中できる人の年収はどんどん上がっていく見通しです。
AIを武器として使いながら、浮いた時間を面談の質向上に使える人が、次の時代の人材業界で高収入を得られる人材になります。
人材業界で年収を上げるための3つの選択

人材業界で年収を上げるためにまず考えるべきは、「どの事業形態・どの会社を選ぶか」という入口の選択です。
同じ努力量であれば、成果が年収に直結しやすい事業形態とインセンティブ設計の会社を選ぶことが最短ルートです。
そのうえで、長期的な年収の天井を意識したキャリア設計もしていくことが大切でしょう。
業界に長くいると見えてくるのが、「努力量より、働く場所の選択の方が年収に大きく影響する」という現実です。
もちろん努力は前提ですが、まず入口を間違えないことが大切でしょう。
選択①:事業形態とインセンティブ設計を見て会社を選ぶ
人材紹介(エージェント)の会社の中でも、インセンティブ設計が明確な会社を選ぶことが重要です。
「頑張れば年収が上がる」と言葉で言っている会社でも、実際の評価制度・インセンティブ計算式を確認しないと実態はわかりません。
具体的には「月の売上〇〇万円でインセンティブが〇〇%支給」という数値ベースで説明できる会社かどうかを確認しましょう。
求人広告や人材派遣を主力にしている会社への転職を検討している場合は、先述の構造的な問題(年収が上がりにくい・下落傾向)を踏まえたうえで、個社ごとに給与制度をよく確認することをおすすめします。
選択②:エッセンシャルワーカー特化型という選択肢
物流・建設・介護・看護などの「エッセンシャルワーカー」(社会インフラを支える職種)特化型の人材紹介は、現時点で競合が少なく、年収の天井が高い領域です。
弊社の事例では、エッセンシャルワーカー特化型で働くCAが年収1,600万円を超えたケースもあります。
また、ホワイトカラーの人材紹介と異なり、業界知識の習得が比較的短期間(2週間程度)でキャッチアップできるのも特徴です。
この領域は大手が参入しにくい構造があります。
大手ほど組織の重さや既存顧客対応のリソースが求められ、ニッチな領域に素早く動くことが難しいためです。
ホワイトカラー系の大手人材会社はAIの進化によって成約難易度が上がりつつある一方で、エッセンシャルワーカー特化型はその影響を受けにくいという特性もあります。
「人材業界に転職したいが、どこを選べばいいかわからない」という方は、この領域も視野に入れてみる価値があるでしょう。
選択③:両面型CAとして経験を積み、AIを武器にする
求職者対応と企業開拓の両方を担う「両面型CA」の経験を積むことで、人材紹介の全体像が見えるようになります。
両面型は業務量が多い側面もありますが、片面型と比べてインセンティブを高く設定している会社も多く、スキルの幅が広がることでキャリアの選択肢も増えます。
加えて、AIツールを使って事務作業・情報整理を効率化することで、浮いた時間を求職者・企業との面談の質向上に使うことが今後の差別化ポイントになります。
「AIに仕事を取られる」のではなく、「AIで自分の武器を磨く」という発想でキャリアを設計することが、年収アップへの最も現実的なルートです。
キャリアアドバイザー転職を検討している方はお気軽にご相談ください
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人材紹介の経営者によくある質問

A日本全体の平均年収(478万円)と比べると、人材業界の平均(約525〜530万円)は上回っています。ただし業界全体のランキングで見ると、金融・コンサルティング・医薬品などの業界には届かず、中間〜やや高めの水準です。事業形態や会社によって大きく幅があるため、一概に「高い・低い」と言いきれない業界です。
A一般的に人材紹介(エージェント)の方が年収が高くなりやすい傾向があります。人材紹介は利益率が高く、個人の成果が年収に反映されやすい構造があるためです。人材派遣は安定感がある一方、成果による年収の差が出にくい構造のため、大幅な年収アップは期待しにくいケースが多いです。ただし個社によって例外もあるため、選考前に給与制度を必ず確認しましょう。
Q未経験から人材業界に入ると年収はどのくらいですか?
A未経験入社の場合、年収300〜400万円からスタートするケースが多いです。ただし人材紹介会社でインセンティブ設計が充実している職場であれば、成果を出すことで入社2〜3年で500〜700万円台に到達するケースもあります。派遣会社や求人広告会社は安定している反面、大幅な年収アップは起きにくい傾向があります。
Q人材業界でインセンティブはどのくらいもらえますか?
A人材紹介会社では、売上(成約金額)に応じてインセンティブが支給されるケースが多く、計算式は会社によって異なります。一般的には「売上の〇〇%」という形で設計されており、月に大きな成約があればインセンティブだけで数十万円になることもあります。ただし成果が出なかった月はインセンティブがゼロになるため、固定給とのバランスを入社前に必ず確認しましょう。
A条件が揃えば現実的です。人材紹介の成果主義型の会社で高いインセンティブ設計がある職場であれば、30代前半で年収1,000万円を超える人材は存在します。エッセンシャルワーカー特化型の人材紹介では、さらに高い年収事例もあります。一方、大手の固定給型の会社では管理職以上にならないと届かないケースが多いです。「どんな会社で・どういうモデルで働くか」によって、現実性は大きく変わります。