人材紹介業を始めようと調べ始めると、まず出てくるのが「免許が必要」という言葉です。
正式には「有料職業紹介事業許可」と呼ばれるこの制度、何が必要でいくらかかるのか、なかなかつかみにくいと感じている方も多いでしょう。
この記事では、人材紹介業の立ち上げを3社経験してきた著者が、免許取得の要件・費用・申請の流れを実務目線で解説します。
競合記事にほとんど書かれていない「純資産計算の落とし穴」「グレーゾーンの判断基準」「取得後の更新・報告義務」にも踏み込みますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

人材紹介業を始めようと調べ始めると、まず出てくるのが「免許が必要」という言葉です。
正式には「有料職業紹介事業許可」と呼ばれるこの制度、何が必要でいくらかかるのか、なかなかつかみにくいと感じている方も多いでしょう。
この記事では、人材紹介業の立ち上げを3社経験してきた著者が、免許取得の要件・費用・申請の流れを実務目線で解説します。
競合記事にほとんど書かれていない「純資産計算の落とし穴」「グレーゾーンの判断基準」「取得後の更新・報告義務」にも踏み込みますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。

人材紹介業を始めるには、厚生労働大臣の許可(有料職業紹介事業許可)が必要です。
職業安定法第30条に基づき、報酬を受けながら求職者と企業のあっせんを行う事業は、許可なく営むことが禁じられています。
許可なく事業を行った場合は、職業安定法第64条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
「人材紹介業の免許」と聞くと、特別な試験や資格のようなものを想像する方も多いでしょう。
実際には試験はなく、厚生労働大臣に対して事業の適正性を証明する審査・許可申請手続きです。
業界では「免許」「許認可」と通称されますが、正式名称は「有料職業紹介事業許可」です。
なぜ許可制が設けられているのでしょうか。
職業安定法が許可制を採用している理由は、「求職者を不当な条件で働かせる事業者から保護する」という仕組みにあります。
求職者は職場環境や待遇について情報の非対称性が生じやすく、悪質な事業者からの保護として、国が事業者を事前に審査して適正事業者のみに許可を与える制度が設けられています。
厚生労働省が発表した令和6年度の統計によると、全国の有料職業紹介事業所数は30,561事業所に達しています(*1)。
前年度の29,171事業所から約1,390事業所(+4.8%)増加しており、市場への参入は増え続けている状況です(*1)。
手数料収入の合計は約9,835億円(前年度比+17.6%増)、常用就職1件あたりの平均手数料は約103万円と報告されています(*1)。
市場が拡大しているほど参入事業者が増え、それだけに制度の適正運用への監視も強まっています。
事業開始前に許可を確実に取得することが、事業継続の大前提です。

人材紹介業の免許(有料職業紹介事業許可)を取得するには、財産・人・場所という3つの要件をすべて満たす必要があります。
特に財産要件は「口座残高」ではなく「純資産(資産-負債)」で判断される点に注意が必要で、借入がある場合は残高が500万円あっても要件を満たせないケースがあります。
財産要件として求められるのは、基準資産額(純資産)が500万円×事業所数以上であることと、自己名義の現金・預貯金が150万円以上(2事業所目からは60万円追加)あることです(*2)。
更新時には基準資産額が350万円×事業所数に緩和されますが、新規申請時は500万円以上を確実にクリアしていなければなりません。
ここでつまずく方が非常に多いのが「純資産」という概念です。
口座に600万円あるから大丈夫、と思っていても、借入金・ローン・未払い金などの負債が200万円あれば、純資産は400万円となり要件を満たしません。
法人の場合は直近の貸借対照表の純資産の部が審査基準になります。
個人事業主の場合は財産目録や確定申告書をもとに純資産を算出します。
申請前に税理士や社会保険労務士に純資産を確認してもらうのがおすすめです。
*2: 厚生労働省「職業紹介事業パンフレット-許可・更新等手続マニュアル-(令和7年4月)」
事業所ごとに、「職業紹介責任者」を1名以上専任することが求められます(*2)。
要件は「成年後3年以上の職業経験を有すること」と「職業紹介責任者講習を修了していること(申請受理日から過去5年以内)」の2点です。
職業紹介責任者講習は、厚生労働省が認定した機関が全国の主要都市で定期的に開催しています。
受講から修了証の発行まで1日で完了するものが多く、費用は1〜2万円程度です。
ただし、開催日程が限られているため、申請時期によっては予約が2〜3ヶ月待ちになることも少なくありません。
実際に人材紹介の現場で感じてきたのは、講習の予約がスケジュール全体を左右しやすいという点です。
「書類は整っているのに、講習日まで間があって申請が遅れた」という話はよく聞きます。
事業計画が固まったら、真っ先に受講日程を確認して予約を入れることを優先してください。
事業所に関して最も重要なのは、「求職者のプライバシーに配慮した面談スペース(個室)」が確保できているかどうかです(*2)。
他の人に会話が聞こえない個室または間仕切りで区切られた面談スペースが求められます。
自宅兼事務所での申請は、条件付きで可能な場合があります。
ただし、賃貸マンションで「事務所使用禁止」の契約がある場合は原則として不可です。
コワーキングスペースやレンタルオフィスを事業所にする場合は、「専用的に使用できる個室が契約上保証されているか」が審査のポイントになります。
同じレンタルオフィスでも担当者の判断が分かれることがあるため、所管の都道府県労働局に事前相談することをおすすめします。
個人情報管理については、令和4年の個人情報保護法改正への対応も確認されます。
求職者の個人情報を適切に取り扱うための管理規程・体制が整っていることが求められます。
人材紹介の現場を経験してから独立に踏み切りたいとお考えの方には、まずキャリアアドバイザーとして既存の人材紹介会社で経験を積むルートも有力な選択肢です。
CA(キャリアアドバイザー)経験者が運営するアイジールジョブでは、人材業界の実態をよく知るスタッフが相談に対応しています。
人材業界でキャリアをスタートしたい方は、ぜひ一度アイジールジョブへご相談ください。

人材紹介業の免許取得にかかる法定費用の最低ラインは、登録免許税9万円+収入印紙5万円(事業所1箇所の場合)の計14万円です。
社会保険労務士への代行を依頼すると総額35万円前後が目安となり、申請から許可が下りるまで2〜3ヶ月かかります(*2)。
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税 | 9万円(許可1件あたり) |
| 収入印紙(申請手数料) | 5万円+1万8千円×(事業所数-1) |
| 合計(事業所1箇所の場合) | 14万円 |
| 社労士代行費用(任意) | 15〜25万円程度 |
| 総額目安(社労士依頼の場合) | 35万円前後 |
登録免許税は許可が下りた後に納付する税金で、収入印紙は申請書類に貼付して提出します。
書類作成を自身で行う場合は法定費用の14万円のみですが、書類は数十点に及ぶため、はじめての申請では社労士への依頼も検討する価値があるでしょう。
申請期間については、都道府県労働局への書類提出から許可が下りるまで2〜3ヶ月が標準的です。
書類に不備があると差し戻しとなり、期間がさらに延びる場合があります。
開業日の目標から逆算してスケジュールを立てることが重要です。
更新時にかかる費用は、収入印紙1万8千円×事業所数のみです(*2)。
初回取得時の14万円と比べてコストは大幅に下がりますが、更新のタイミングを逃すと許可が失効して再申請が必要になるため注意してください。

免許申請の流れは「事業所準備→職業紹介責任者講習の受講→書類作成・提出→審査」の4段階です。
最も多いつまずきは書類の不備と、財産要件を「口座残高」で考えてしまうミスです。
講習は予約が込み合うため、事業計画が固まったらすぐに予約を押さえることが重要です。
最初のステップは、3つの要件(財産・人・場所)がすべて申請可能な状態にあるかを確認することです。
財産要件については、純資産が500万円以上であることを税理士または会計士に確認してもらってください。
口座残高ではなく貸借対照表・財産目録ベースでの確認が必要です。
ここでの確認を省くと、書類提出後に「要件不足」として差し戻しになるリスクがあります。
事業所については、賃貸借契約書に「事務所使用可」の記載があるかどうかを確認します。
不安がある場合は、事前に所管の都道府県労働局に実際の場所の情報を伝えて相談しておくと安心です。
職業紹介責任者講習を受講して修了証を取得します。
修了証は申請受理日から過去5年以内のものが有効です。
講習の予約が申請全体のスケジュールを左右する最大のボトルネックになることがあります。
特に年度末(1〜3月)は受講者が集中するため、早めの予約が必須です。
過去に受講した修了証がある方は有効期限も確認してください。
書類が揃ったら、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。
主な提出書類は以下のとおりです。
・職業紹介事業許可申請書
・事業所の平面図・位置図
・法人登記事項証明書(法人の場合)
・職業紹介責任者の講習修了証・履歴書・住民票
・直近の貸借対照表・損益計算書(法人)または財産目録(個人)
・個人情報の適正管理に関する規程
書類の不備が差し戻しの最大の原因です。
財務書類は税理士に、手続き関連書類は社労士にダブルチェックしてもらうと、差し戻しリスクを大幅に下げられます。
独立の前に人材業界の実務を学びたいとお考えの方には、まずキャリアアドバイザーとして既存の会社で経験を積む方法があります。
業界内側からの経験は、独立後の事業設計に大きく役立ちます。
CA職への転職を具体的に検討している方は、ぜひアイジールジョブへご相談ください。

「継続的に」「報酬を得て」「求職者と求人企業のあっせんを行う」の3点がそろう場合は、原則として免許が必要です。
「無料なら大丈夫」という考え方は誤りで、無料であっても継続的なあっせんを行う場合は「無料職業紹介事業」の届出(職業安定法第33条)が必要になります。
有料職業紹介事業許可が必要なのは、報酬を受け取りながら求職者と企業のあっせんを継続的に行う場合です。
代表的なケースを以下の表で整理します。
| ケース | 要否 |
|---|---|
| 求職者を紹介し、企業から手数料を受け取る | 必要 |
| 無料で紹介するが継続的にあっせんを行う | 届出が必要(無料職業紹介事業) |
| 業務委託で人材会社から紹介フィーを受け取る | 必要(実態が職業紹介に該当する場合) |
| 継続的に人材を紹介し、成功報酬を受け取る | 必要 |
「継続性」と「報酬」の両方が判断基準になる点を押さえておいてください。
一度限りのケースであっても、継続する意図・実態がある場合は職業紹介事業に該当するとみなされる可能性があります。
一方、原則として許可不要の活動もあります。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 自社の採用活動(リファラル採用含む) | 自社への採用は「職業紹介」に非該当 |
| 求人情報を掲載するだけのWebサービス | 情報掲載はあっせんではない |
| キャリアコーチング(就職先を斡旋しない) | あっせん行為がなければ職業紹介に非該当 |
ただし、求人マッチングサービスであっても、求職者の希望に合わせて求人を絞り込んで紹介する行為は「あっせん」に当たると判断される可能性があります。
「情報を載せているだけ」という形式でも、実態を伴う仲介行為があれば許可が必要になることがあります。
業界で最も多い誤解を3つ整理します。
誤解① SNSで知人を紹介して少し謝礼をもらった場合
金額の大小ではなく、継続する意図・実態があるかどうかが問われます。
「月に数人、少額の報酬でやっている」という状況でも、継続性があれば許可が必要になる可能性があります。
誤解② 無料で紹介しているから問題ない
無料であっても、継続的に求職者と企業のあっせんを行えば「無料職業紹介事業」の届出が必要です(職業安定法第33条)。
「有料でないから届出も不要」という考え方は誤りです。
誤解③ 業務委託契約だから大丈夫
契約形態に関わらず、実態として有料の職業紹介にあたる行為を行っていれば許可が必要になる可能性があります。
人材会社から業務委託として紹介業務を請け負い、紹介フィーを受け取る「中抜き」形態も問題になるケースがあります。
判断に迷う場合は、事業開始前に所管の都道府県労働局に相談するのが最善策です。

2025年1月に施行された改正では、「入社2年以内の求職者への転職勧奨禁止」と「過度なお祝い金の禁止」が新たに追加されました。
大半の事業者への実務的な影響は軽微ですが、法令遵守の姿勢を示すことは求職者・企業からの信頼獲得に直結します。
| 規制内容 | 概要 | 現場への影響 |
|---|---|---|
| 転職勧奨の制限 | 直近就職から2年以内の求職者への転職勧奨を原則禁止 | 大半の事業者への影響は軽微 |
| お祝い金の禁止 | 就職を条件とした過度なお祝い金・紹介料の提供を禁止 | 差別化ツールとして使っていた一部事業者に影響あり |
「入社2年以内への転職勧奨禁止」については、積極的に行っている事業者がもとから少なく、多くの事業者への影響は限定的です。
「お祝い金禁止」については、求職者集客の差別化手段として活用していた事業者への影響がある一方、現時点では行政指導レベルが中心であり、即座に刑事罰が科される状況にはありません。
「知らなかった」では通らないのが法令遵守の世界です。
正しく理解して適切に対応することが、長く事業を続けるための基盤になります。
法令の詳細については、定期的に厚生労働省の公式情報を確認することをおすすめします。

有効期間は新規許可から3年で、更新後は5年ごとに更新が必要です。
更新申請は有効期間満了の3ヶ月前までに行う必要があり、毎年6月末までに「職業紹介事業報告書」を提出する義務があります。
怠ると許可取り消しのリスクがあります(*2)。
| 区分 | 有効期間 |
|---|---|
| 有料職業紹介事業(新規許可) | 3年 |
| 有料職業紹介事業(更新後) | 5年 |
| 無料職業紹介事業 | 5年(新規・更新とも) |
更新申請は有効期間満了日の3ヶ月前までに、所管の都道府県労働局を経由して厚生労働大臣へ提出します(*2)。
期限を過ぎると許可が失効して事業継続ができなくなるため、カレンダーや業務システムに更新期限を必ず登録しておいてください。
更新時の財産要件は、新規申請時の500万円から350万円×事業所数に緩和されます(*2)。
費用面でも収入印紙1万8千円×事業所数のみで、初回の14万円と比べて大幅に下がります。
加えて、毎年6月末までに「職業紹介事業報告書」を提出する義務があります。
前年度の紹介実績・求人数・求職者数などを記載して所管労働局へ提出するもので、提出義務を知らないまま放置してしまうケースが実際に起きています。
報告義務の不履行は行政指導の対象になり、最悪の場合は許可取り消しにつながりかねません。
免許の取得はゴールではなく、事業を続けるためのスタート地点です。
取得後の更新・報告義務も含めた総合的なコストと手間を事前に把握した上で、事業計画を立ててください。

免許取得後の最大の壁は「最初の1件を成約するまでの期間」です。
立ち上げから売上が安定するまで最低6ヶ月を見込んで資金計画を立てる必要があります。
特化型(介護・建設・医療など)でスタートすると、競合が少なく最初の成約スピードが上がりやすい傾向があります。
免許を取れば翌月から売上が立つとは限りません。
正直なところ、現場の感覚としては最初の成約まで6〜12ヶ月かかるケースは決して少なくありません。
両面型(企業開拓と求職者集客を同時に行う形態)で独立した場合、どちらの基盤もゼロから構築する必要があり、成約までの期間が長くなりやすい傾向があります。
資金計画の基本は「6ヶ月の売上ゼロ期間を想定した準備」です。
許可取得費用に加えて、事業所の初期費用・採用管理ツール・当面の生活費・運転資金を含めた総資金計画を立ててから動き出すことが重要です。
セグメント選びも初期の成約スピードを大きく左右します。
介護・建設・医療・保育などのエッセンシャルワーカー分野は、大手エージェントがカバーしきれていないニッチが残っていることが多く、新規参入でも比較的早く最初の成約を取りやすい傾向があります。
一方、ITエンジニア・コンサルタント・管理職などは競合が激しく、実績のない立ち上げ期には厳しい戦いになりやすいです。
「どのセグメントから始めるか」は、免許を取る前に決めるべき最重要の戦略判断です。
セグメントが定まっていない状態で免許だけ取っても、方向性が定まらないまま資金が尽きるリスクがあります。

個人事業主でも人材紹介の免許は取れますか?
自宅兼事務所でも申請できますか?
副業として人材紹介業を行うことはできますか?
人材派遣業と人材紹介業の免許は別物ですか?
外国人向けの人材紹介に追加の免許は必要ですか?
【免責事項】
本記事に記載の数値・要件・手続き内容は、執筆時点の情報をもとにした参考情報です。法改正や行政の運用変更により内容が変わる場合があります。実際の申請にあたっては、所管の都道府県労働局または社会保険労務士・行政書士などの専門家にご確認ください。
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監修者
株式会社アイジール 代表取締役
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の人材紹介事業を運営しております。