SNSや求人サイトで「業務委託でCA(キャリアアドバイザー)として一緒に働きませんか」という誘いを目にしたことはあるでしょうか。
報酬設定が魅力的に見えるほど、受けていいのかどうか迷うものです。
結論から言えば、業務委託で求職者に求人を紹介する行為は、職業安定法と労働基準法に照らして法的にグレーなことがほとんど。
なぜそうなるのか、どこまでなら動けるのか、合法的に稼ぐ方法はあるのか。
人材紹介事業を複数立ち上げてきた経験をもとに、整理してお伝えします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況における法的判断については、必ず弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
監修者
株式会社アイジール 代表
株式会社エス・エム・エスへの第二新卒での入社をきっかけに人材業界へ足を踏み入れる。その後、株式会社プレックスの創業メンバー・役員として約3年間、キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを含む業務全般を経験。現在は株式会社アイジールにて、キャリアアドバイザーを中心とした人材・HR業界特化の転職エージェント事業を運営。
業務委託キャリアアドバイザーが違法になりやすい3つの理由

キャリアアドバイザー(CA)業務を業務委託契約で個人に依頼・請負することは、職業安定法と労働基準法の複数条文に抵触する可能性が高いとされています。
違法根拠は「無許可での職業紹介」「名義貸し」「中間搾取」の3点で、発注側・受託側ともに刑事罰の対象になりうる行為です。
「業務委託CAがなぜアウトになるのか」を、条文番号とともに確認しておきましょう。
難しい法律の話ですが、「なぜ問題になるのか」の構造がわかると、グレーな求人を見分けるときに役立ちます。
求職者と求人企業をマッチングし、雇用関係の成立をあっせんする事業のうち、対価として手数料を受け取るものを「有料職業紹介事業」と呼びます。転職エージェント・人材紹介会社が行っているビジネスがこれに該当します。職業安定法では、この事業を行うために厚生労働大臣の許可が必要と定めています。
有料職業紹介は許可なしでは行えない
有料職業紹介事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です。
職業安定法第30条(*1)がこれを定めており、許可なしで有料の職業紹介を行った場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
業務委託契約でCAとして求職者に求人を紹介する行為は、この「無許可での有料職業紹介」に当たりうる行為です。
「自分はフリーランスだから関係ない」「依頼元の会社が許可を持っているから大丈夫」という理解は、必ずしも正確ではありません。
実態として職業紹介を行っているかどうかが、法的な判断の分かれ目になります。
*1: 職業安定法第30条
許可会社の名義を借りても違法になりうる
「依頼元が許可会社だから問題ない」と言われても、業務委託の場合は安心できない場合があります。
職業安定法第32条の10(*2)は、有料職業紹介事業者が自己の名義を他人に貸して職業紹介事業を行わせることを禁じています。
これが「名義貸し禁止」と呼ばれる規定です。
許可を持つ会社の看板を借りながら、実質的には個人が求人紹介を行うスキームは、この規定に抵触する可能性が高いとされています。
「フルコミッション型CA」として業務委託で募集されているものの多くが、このスキームに近い構造をとっています。
違反した場合の罰則は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」(同法第65条第3号)です。
*2: 職業安定法第32条の10
成果報酬の分配が「中間搾取」に当たりうる
3つ目の根拠が、労働基準法第6条(*3)が禁じる「中間搾取」です。
中間搾取とは、「法律に基づいて許される場合を除き、業として他人の就業に介入して利益を得ること」を指します。
人材紹介会社が業務委託CAへ成約手数料の一部を業務委託料として支払う構造は、就業への介入を通じた利益の中間的な分配とみなされる可能性があります。
違反した場合の罰則は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と、3つの根拠の中で最も重い内容でしょう。
業界内でも見落とされがちな条文ですが、発注側・受託側の双方にとって無視できないリスクです。
*3: 労働基準法第6条
・無許可での職業紹介:職業安定法第30条(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)・名義貸し禁止:職業安定法第32条の10(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)
・中間搾取:労働基準法第6条(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)
3つとも刑事罰の対象になりうる点を押さえておきましょう。
違法と知りながら求人が溢れる理由

違法リスクがあるにもかかわらず、業務委託CA求人は今も求人サイトやSNSに大量に存在しています。
その背景には、発注側(人材紹介会社)の固定費ゼロ化ニーズと、副業・フリーランスを希望する受託側の増加という、双方の利害が絡んでいます。
ただし、この構造は発注側にメリットが集中し、CA個人がリスクを全負担する非対称な関係である点を知っておくべきでしょう。
発注側の本音は「固定費をゼロにすること」
現場の感覚として、人材紹介会社が業務委託CAスキームを使いたい最大の理由は固定費ゼロ化です。
表向きは「リソース不足」「コスト削減」と言われますが、本質はもっとシンプルな経営判断だと感じています。
人材紹介会社がCAを正社員として雇えば、給与・社会保険・賞与・研修コストといった固定費が毎月発生します。
一方で売上は成約ベース。立ち上げ初期や採用が決まりにくい時期は、売上ゼロでも固定費だけがかさむ構造です。
業務委託なら成果ゼロの月は費用もゼロにできるため、特に立ち上げ初期の経営判断としては確かに合理的に映ります。
複数の人材紹介事業を立ち上げてきた経験から言えば、固定費がゼロになることの安心感は実際に大きいものです。
ただ、その構造を支えているのはリスクを引き受けるCA個人の存在だという点は、発注側として忘れてはならない視点でしょう。
受託側にも「自由に働きたい」という希望がある
近年はフリーランスや副業を好む働き手が増えており、CA経験者の側から「業務委託として受けたい」という相談が来るケースも実際にあります。
時間や場所にとらわれずに働きたい、成果次第で収入を増やしたい。
そういった気持ちは、業界にいる立場でも理解できます。
ただ、条件がおいしく見えるほど名義貸しスキームに近い構造になっているケースが多く、「魅力的に見える求人ほど要注意」というのは、この領域でも例外ではないでしょう。
「なぜこんなに条件がいいのか」と立ち止まって考える習慣が、リスクを避ける一番の手がかりになります。
この構造を理解した上で、「合法的にCAとして働ける環境を探したい」と考え始めた方もいるでしょう。
アイジールジョブは正社員を中心にしておりますが、CA経験者が運営しているからこそ表に出ない好条件の非公開求人を中心に扱っています。
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業務委託を受けたキャリアアドバイザー個人が負うリスク

業務委託CA求人を受けたCA個人も、法的なリスクから無縁ではありません。
「発注元に問題があっても自分は関係ない」とは、残念ながら言いきれないのが実情です。
受けた場合に何が起きうるか、3点に絞って整理しておきましょう。
多くの解説記事は発注側のリスクだけを書いています。
受託するCA個人のリスクに触れているものはほとんどないのが現実ですが、「受けていいの?」と迷っている方こそ確認しておきたい内容です。
「会社の許可があるから大丈夫」は業務委託では通じない
「依頼元の会社が許可を持っているから問題ない」と言われたとしても、業務委託契約の場合は話が変わります。
業務委託では、あなたは会社の「労働者」ではなく「独立した個人」として扱われます。
会社が持つ許可は、あくまで会社自身のものです。
その名義を使いながら、実質的には個人が求職者への求人紹介・推薦を行う行為は、職業安定法第32条の10の名義貸し禁止に抵触する可能性があります。
「貸した側(会社)」だけでなく、紹介行為を実際に行った個人も問題になりうる点は、業務委託を検討する前に知っておくべきことでしょう。
ある日突然「事業を停止します」と言われたら
業務委託CAとして稼働中に、発注元の人材紹介会社が行政指導を受けて事業停止になる。
そういうことが実際に起きたとき、あなたの収入はその日からゼロです。
業務委託には雇用保険が適用されません。
正社員であれば失業給付という手段がありますが、業務委託の個人にそのセーフティネットはありません。
発注元側の問題で突然収入が途絶えても、補填される仕組みがないという現実は、業務委託を選ぶ前に意識しておくべきことでしょう。
フルコミッションで成約ゼロの月が続いたとき
業務委託契約は、労働基準法などの労働法の保護対象外となります。
最低賃金の保証はなく、フルコミッション型では成約ゼロの月の報酬もゼロです。
報酬の未払いが起きた場合も、正社員なら使える「労働基準監督署への申告」という手段が使えません。
民事的な請求(内容証明の送付・裁判)が必要になり、時間も費用もかかります。
「法的保護がない」という前提を正確に理解した上で判断することが大切でしょう。
契約書に「求職者への求人紹介・推薦・条件交渉・内定承諾の促進」が含まれているかを確認してください。含まれているなら、法的にグレーなケースに当たる可能性があります。不安な場合は、最寄りの都道府県労働局の需給調整事業課(人材サービスの許認可・指導を担当する窓口)に相談することもできます。
業務委託には雇用保険もなく、報酬トラブルが起きても法的保護が薄い。
これがCA個人が直面するリスクの実態です。
ただし、すべての働き方がこうした不安を抱えるわけではありません。
アイジールジョブでは正社員の求人が中心ではありますが、CA経験者の運営だからこそ職場環境の実態を内側から判断した上で安全な求人をご紹介できます。
リスクを正しく理解した今が、動き出す良いタイミングかもしれません。
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合法的に業務委託できる業務の範囲

すべての人材紹介周辺業務が外部委託できないわけではありません。
「求職者と求人を直接つなぐ」という職業紹介の核心行為に関与しない業務なら、適切な契約形態で外部委託できるケースがあります。
「どこまでなら合法か」を正確に把握しておくことは、発注側にとっても受託側にとっても重要な判断軸です。
核心行為に関与しない周辺業務は委託できる可能性がある
職業安定法が規制しているのは「雇用関係の成立をあっせんすること」です。
求職者と求人を直接マッチングし、雇用関係の成立に直接関与しない業務であれば、外部委託できる可能性があります。
外部委託できる可能性がある業務の例:
一方で、「この求人がおすすめです」と推薦する行為・条件交渉・内定承諾の促進は、あっせんの核心に関与する行為とみなされる可能性があります。
契約書上で業務内容の線引きを明確にし、必要に応じて労働局へ事前確認することが賢明でしょう。
また、令和7年3月31日付の厚生労働省通達(基監発0331第1号)(*4)では、業務委託における「指揮命令の実態」に関する判断基準が改めて整理されています。
形式的な契約書の形より実態を重視して判断される傾向が強まっているため、「業務委託と書いてあれば問題ない」という考え方は通用しにくくなっています。
*4: 令和7年3月31日付厚生労働省通達(基監発0331第1号)
フリーランス人材のあっせんは職業安定法の適用外
知っておきたいのが、フリーランス・業務委託人材のマッチング事業は、職業安定法の「職業紹介」には当たらない点です。
職業安定法が対象とする「職業紹介」は、労働者と使用者の間に雇用関係を成立させることを目的とした行為に限られます。
そのため、雇用関係を前提としないフリーランスや業務委託人材を企業案件に紹介するサービスは、許可なくビジネスとして運営できます。
クラウドソーシングやフリーランス案件マッチングのプラットフォームが許可なく存在できるのは、このためです。
ただし、これはあくまで「雇用されないフリーランスのあっせん」に限った話。
正社員・アルバイトとして雇用される転職・就職に関わる紹介行為とは明確に区別されますので、混同しないよう注意が必要でしょう。
「雇用関係の成立に直接関与するかどうか」が合法・違法の分かれ目です。求人を推薦・条件交渉・内定成立に向けた説得といった行為はNG。スカウト送信代行・日程調整・書式整理など、雇用関係の成立に直接関与しない周辺業務であれば委託できる可能性があります。
キャリアアドバイザーのスキルを活かして合法的に稼ぐ3つの方法

CAとしてのスキルを合法的に活かして稼ぐ方法は複数あります。
最も確実なのは雇用契約での参加。
独立を本気で目指すなら、法人設立と許可取得が唯一の正規ルートになります。
「業務委託しかないと思っていた」という方に向けて、現実的な3つの選択肢を整理します。
方法① 雇用契約で副業参加する
副業やスモールスタートで人材紹介に関わりたいなら、最もリスクが低いのは雇用契約(アルバイト・契約社員)での参加です。
人材紹介会社にアルバイトとして雇用されていれば、初回ヒアリング・転職状況の確認・正社員CAへのトスアップを合法的に行えます。
報酬は固定時給のため、フルコミッションに比べると金額は小さくなりやすいです。
ただし最低賃金・社会保険の適用があり、法的リスクもほぼゼロで関われます。
「まずCAの副業を試してみたい」という段階なら、この形から始めることをおすすめします。
方法② 法人を設立して有料職業紹介の許可を取得する
本格的に独立してCA業務をフルサイクルで行いたいなら、法人設立と有料職業紹介事業の許可取得が唯一の合法ルートになります。
職業安定法上、有料職業紹介の許可は原則として法人に限られており、個人事業主での取得は実務上困難なケースがほとんどです。(詳細は厚生労働省または専門家にご確認ください)
法人(株式会社・合同会社など)を設立した上で、以下の要件をすべて満たすことが条件です。
許可取得にかかる標準的な期間は3〜6ヶ月程度で、登録免許税(9万円)や申請手数料なども別途発生します。
これらの要件を満たすことを考えると、実際には個人での非常に難しく、法人格の取得が現実的な前提条件と言えるでしょう。
方法③ キャリアコーチング・相談業務として独立する
もう1つの選択肢が、「雇用関係の成立を目的としない」キャリア相談やコーチングとして独立する方法です。
職業安定法が規制しているのはあくまで雇用関係の成立をあっせんする行為に限られるため、コーチングや相談支援は原則として許可なしで提供できます。
CAとしての面談スキル・傾聴力・キャリア設計の知見は、コーチングや相談業務でもそのまま活かせます。
有料サービスとして提供する事業者も増えており、月数万円〜数十万円のレンジで稼いでいる方もいるでしょう。
ただし、相談の中で「この求人いいですよ」と具体的な求人を紹介する行為が入ると、グレーになる可能性があります。
「求人を介在させない」という線引きを意識的に守ることが、コーチングとして独立する際の重要な原則です。
よくある質問

Qフルコミッション型のキャリアアドバイザー求人は合法ですか?
Aフルコミッション(完全成果報酬)型の業務委託CA求人の多くは、許可を持つ会社の名義を使いながら個人が実質的に紹介業を行う、いわゆる名義貸しスキームに近い構造をとっている可能性があります。報酬体系がフルコミッションかどうかよりも、「許可を持つ会社の名義のもとで、実質的に個人が紹介業を運営しているかどうか」が判断の軸になります。
合法と言いきれるケースは多くないのが現実です。
判断に迷う場合は契約内容を確認した上で、最寄りの労働局の需給調整事業課(人材サービスの許認可・指導を担当する窓口)に相談することをおすすめします。
Q副業でキャリアアドバイザーをするのは違法ですか?
A「副業=業務委託」とは限りません。副業であっても、人材紹介会社にアルバイトや契約社員として雇用される形であれば、法律の保護下でサポート業務を行えます。
問題になるのは「業務委託契約で求人紹介行為を行う場合」です。
副業でCAに関わりたいなら、まず雇用契約での参加から検討することをおすすめします。
A雇用関係の成立を目的としないキャリア相談やコーチングは、職業安定法の「職業紹介」の対象外となります。CAスキルを活かしてコーチングや相談業務を提供することは、原則として許可なしで行えます。
ただし、相談の中で特定の求人を勧める・応募を促すといった行為が入ると、職業あっせんとみなされる可能性がある点には注意が必要です。
コーチングとして独立する場合は、「求人を介在させない」という線引きを守ることが重要です。
Q業務委託CAの求人に応募してしまった場合はどうすればいいですか?
Aまず契約書の内容を確認してください。「求職者への求人紹介・推薦・条件交渉・内定の促進」が含まれているなら、法的にグレーなケースに当たる可能性があります。
契約を結んでいても業務開始前であれば断ることも可能です。
判断に迷う場合は、最寄りの都道府県労働局の「需給調整事業課」(人材サービスの許認可・指導を担当する窓口)に相談することもできます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。個別の状況における法的判断については、必ず弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。